通常の飲食店経営と比べて開業資金や固定費を抑えられるのが魅力のキッチンカー。コロナ渦の影響もあって今注目を集めている業態です。
ここではキッチンカーでの開業を検討している方に向けて「キッチンカーで開業する方法」をテーマに必要な資金や準備、おすすめのメニューなどを解説します。
キッチンカーで開業する方法
日本では、古くから屋台文化がありますが、キッチンカーのビジネスは、まだまだ成熟していない点があり、必要な手続きや初期投資なども不明な点が多いと思います。まずは、その概要を確認していきましょう。
必要な資金
キッチンカーとして使用する車両をどのタイプにするかで、必要な資金は変わってきますが、300万〜500万円で開業が可能です。
販売する商品に自信があり、ある程度の売上が見込める場合、キッチンカーをレンタルすることで最初にかかる費用をさらに安くし、月々の支払いを増やす方法も考えられますが、資金に余裕があるのであれば、購入することをお勧めいたします。
手続き・資格
調理を伴う販売の場合、保健所で食品営業自動車の申請が必要になります。申請する業態としては、3つに分かれており、出店する場所の管轄になっている保健所で詳細を確認の上、どの営業許可を取るべきか確認することが必要です。
一般的に、その3つとは以下の通りです。
・飲食店営業
・喫茶店営業
・菓子製造業
また、日によって場所を変えて出店する計画をしている場合は、出店場所が都道府県をまたぐと、その都道府県ごとに許認可が必要になります。さらに市町村によっても、それぞれ申請が必要な都道府県もありますので、事前にしっかり確認することが大事です。
そして、意外と知られていないのが、仕込みスペースの許認可です。仕込みがほとんど必要ないものを販売する場合は、この食品営業自動車の申請だけでいいのですが、ある程度、本格的な仕込み作業がある場合は、キッチンカーとは別に保健所の許可を得た調理場が必要になります。
さらに、キッチンカーにおいても、仕込み用の調理スペースに関しても、食品衛生責任者の設置は必要となりますので、事前に講習を受ける必要があります。
必要なもの
イートインの飲食店で必要なものは、わりと漏れることなく準備できるケースが多いですが、キッチンカーとなると想像がつかない、思いつきもしない備品などが出てきます。
メニューに応じた厨房機器、調理器具、持ち帰り用の資材などは問題ないとは思いますが、キッチンカーを出店した場所でのメニュー表示や看板、のぼりなどが必要になってきます。
キッチンカーの開業は、イートインとは違い、出店した先々でそこを通っていく人たちに一瞬でお店の存在をアピールして、購買につなげていかなくてはなりません。これにより、売上を大きく左右することになります。
昔ながらの屋台でも、その場所に屋台を引いて行って、到着してからお店の開業の準備をするのに、外回りを整えるだけで1時間以上の時間を費やします。言い換えれば、毎日お店の外装を少し工事しているようなものです。
【キッチンカーならではの必要なもの】
・基本的なカー用品
・メニューパネル
・看板
・看板の重石
・自動車保険
・モバイル型のキャッシュレス決済端末
出店場所の確保
この10年で、キッチンカーの台数はかなり増え、認知も広がってきたことから、最近では、キッチンカー出店者とスペースを貸したい人とのマッチングをするサイトが出てきました。これらを利用するのも手でしょう。
また、オフィスビルの駐車場の一角を借りたり、スーパーの店頭を借りたりすることも可能ですが、これらはビルのオーナー、スーパーの経営者との直接交渉で、場所を確保しているキッチンカーがいまだに多く、インターネットでは見つからない素晴らしい立地に巡り会えることもあります。
【参考サイト】
『青山ファーマーズマーケット』
出店場所のコンセプトがしっかり決まっているため、テイストが合う出店者が集まり、相乗効果もあります。
http://farmersmarkets.jp
『自由市場』
旧ドンキホーテHDが管理しているレンタルスペースの日貸しサイトでドンキホーテの一角でも出店できます。
https://www.jiyu18.jp
『Mellow(メロー)』
日本最大級の出店場所マッチングサイトです。
https://www.mellow.jp
飲食店営業に関する詳しい情報が気になった方は、飲食店開業セミナーへのご参加もおすすめします。
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キッチンカーで開業する際の車両の選び方
キッチンカーの開業の際、慎重にならないといけないのは、どの車両を選ぶかという点です。特にキッチンカーのサイズに関しては、重要です。
開業する際に
「どんな商品を売りたいのか?」
「ターゲットはどんな客層なのか?」
その点から考えて、
「どんな立地で出店するのか?」
このような流れで考えていくのがいいでしょう。このように整理していき、さらに、出店することが予測される地域の交通事情や建物の密集具合、スペースが存在するのかを確認しておくことが大事になります。
例を挙げると、ご飯ものを3品とドリンクを8品提供したいと考え、少し大きめの車両を選んだ場合。ターゲットの客層がいるのは下北沢・三軒茶屋といった比較的密集した地域ですが、大きめのキッチンカーを停車できるスペースを貸してくれるところがほとんどなく、希望の地域には出店できないといったチグハグな状態が、開業前から起こってしまうこともあり得ます。
最初の車両選びの判断で「これを売りたい!」という大事なコンセプトまでもを変更しないといけなくなることもありますので、ここは慎重にプランした上で、決定するべきでしょう。普通の飲食店の開業では、物件探しに相当な神経を使い、歩き回って慎重に決断する人でも、なぜかキッチンカーの開業で、車両選びを少し軽い気持ちでしてしまう人が多くいらっしゃいます。
キッチンカーを開業する人は、ほとんどの方がご自身でキッチンカーの中で、調理販売される方だと思います。開業後は、1日のうちのほとんどの時間を過ごす自分の城となるわけですし、このビジネスの成否を占う最も重要な点だと考えるべきです。
キッチンカーでの販売におすすめのメニュー
キッチンカーのビジネスがだいぶ定着して、10年以上経った今、さまざまな商品が販売されるようになってきました。基本的に、街角で出店しているキッチンカーを利用するお客様は、イートインの飲食店を利用するほど時間を取れない人で、気軽に立ちよっていることが大前提です。
つまり、イベントなどのキッチンカーでない限りは、提供までに待たされることは想定していないので、最終調理工程ができるだけ短いことは、メニューの選定において一番重要になります。その中でも、安定した収益モデルが確立されたおすすめのメニューをご紹介いたします。
ハンバーガー
これはロングセラー商品ですが、近年は高価格帯のハンバーガーが市民権を得てきたので、これからさらに期待を寄せているメニューです。まず、ハンバーガーは昼食・夕食時は当然の需要があり、さらにおやつ・夜食などの需要もあるので、出店している時間帯で全くお客さんが来ない時間帯がないことが特徴です。
また、提供する側としても、事前の仕込みがしっかりできていれば、最終調理工程が短く、あまりお客様をお待たせせずに提供できることが強みです。
関連記事:ハンバーガー屋を開業するには?必要な資金・設備や成功の秘訣も
たこ焼き
もっとも日本で定着しており、原価の安さとしてはナンバーワンであり、純利の確保がしやすいメニューです。また、特に仕込みが必要でもなく、高度な調理技術も必要ないことから、粉物としての代表格としてお勧めできます。
そんなにお腹が空いていなくても、なんとなく買ってしまい、ちょっとした差し入れにもなるメニューは、見込み顧客の分母が大きく、期待できます。
カオマンガイ
ここでは、タイのソールフードであるカオマンガイを挙げましたが、もう少し大きい定義でいうと、炊いたご飯に何か『乗せる』『かける』メニューです。
このタイプは、仕込み場所の確保と許認可が絶対に必要となりますが、キッチンカーの出店先での作業がほとんどなく、スタッフの教育、訓練などがほとんど必要ないことが1番のメリットです。
キッチンカーでの開業で失敗しないための注意点
キッチンカーでの開業は、イートインのビジネスと大きく違う点がありますが、もっとも色濃い特徴は、『攻めのビジネス』であることです。イートインの場合は、その場所で開業したら、常にそこでお客様を待ち続けることになります。しかし、機動力を持ったキッチンカーは、こちらからお客様を狙い撃ちしに出かけていくことができます。
このとても能動的なキッチンカービジネスは、ある人にはストレスでしかなく、ある人には楽しくてしょうがないものとなるでしょう。雨がふれば、お客さまは全く来ず、暑すぎでもダメ、でも最高の天気であれば通常の5倍の売り上げなんていうことも、珍しい話ではありません。
この日々状況が変わり、違う場所に出かけていくことが、楽しめる人であるかどうかが、キッチンカーの開業を成功させる最低条件だと感じます。
まとめ
今後、テイクアウト需要がさらに増え、郊外での消費が増えることが予想される中、キッチンカーの開業は、とても期待できるものとなります。キッチンカーの開業は、このビジネスならではの多角的な分析とプランニングが必要となってきます。
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